必ずしも性的なものではないが、そういう人間もいるのだそうだ

カニバリズムは一種の異常性愛による行為である場合も存在する

その点でも幼女連続殺人の事件は、コピー文化という情報社会の典型的な異常性愛事件であったと言えよう。人間は人肉を食べてきた人が人の肉を食べる人間にとってそれはもっともおぞましい行為と思われるだろう。だが「カニバリズム」と呼ばれる、こうした「人肉嗜食」の習性を持つ種族は、世界中を見わたせばかなり多く存在する。カニバリズムの原初期的な形態は、必ずしも性的なものではない。

むしろ、呪術的・宗教的なものである。かってソロモン群島の酋長は、年老いるとヤシの木に登って身投げすることを義務づけられていた。酋長は年を重ねるとともに呪術的な力が衰えていく。呪いが通じなくなると、豚は子を産まなくなり、ヤシの木は実を結ばなくなり、魚も捕れなくなる。女たちも子を孕まなくなる。そうなると部族が滅亡してしまうので、呪力が尽きないうちに酋長には死んでもらって、もっと若い、呪力にすぐれた者が新しい酋長の座につくことが望ましいからである。

しかも、酋長が死ぬと、みんなでその肉を食べてしまう。呪術的な力をある程度残して死ぬわけだから、その肉を食べることによって、その力を体内に取り入れることができると考えられていたのである。これと似た話では、昔から勇者の肉を食べるという伝統がある。ごく最近まで日本でも行なわれていたことである。たとえば、明治維新で官軍が会津に攻め入った時のことである。ひできち会津に「槍の秀吉」という若武者がいて、槍をしごきながら官軍のなかに単身突入していった。結局鉄砲に撃たれて死んでしまうのだが、この少年の勇敢な戦いぶりに感心し、官軍の連中はその肉を食べてしまったと伝えられている。


これに対して性目標の異常とは、性欲を満足させる行為が異常であることを言う。その代表的なものは、性行為の相手を苦しめたり、傷つけたりすることで性欲の満足を得るサディズムである。サディズムという言葉は、小説家でもあったフランス貴族のマルキ・ド・サド侯爵の作品のなかに加虐的な性的行動が多く登場することから、ドイツの精神科医R・クラフト・エービング(一九〇三)によって命名されたものである。

サディズム、マゾヒズムといった用語は今では一般的にも通用する。よく知られているように、性的サディズムとは、性行為の相手に苦痛を与え、相手が苦しむ様子を見ることによって性的に興奮するという性的な異常である。性的マゾヒズムは、性行為の相手から屈辱を受けたり、苦痛を与えられることによって性的に興奮するものである。

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